国語+音楽 小学校高学年 「チューリップ」を授業する TOSS-LAND
発問指示 授業概要
[文責] 有動 英一郎


 教師は、「チューリップ」を幼児の声で録音した1本のカセットテープを提示する。
 テープをなぜ幼児の歌にしたか。それは、幼児でさえ知っている歌であるということを子供達に自覚させるためである。慣れ親しんでいる歌、こんなの簡単、なんでこんな歌を6年生で勉強するのかという意外感を子供達に持たせるためであった。子供たちに「チューリップ」=簡単・単純・明解を意識づけることを意図した。
 教師は、授業開始のチャイムが鳴るや否やテープレコーダーのスイッチを入れる。
 さいた さいた
 チューリップのはなが
 ならんだ ならんだ
 あか しろ きいろ
 どのはなみても
 きれいだな

と幼児の歌が流れる。
 幼児の声に対しての児童たちの笑い声が少し起こる。となりと顔を見合わしてにっこりとする子供もいる。
 子供たちが聴き終わると同時に、教師はB4用紙の上部に「チューリップ」の歌詞を印刷したものを全員に配布する。
 配布が終わって教師は言う。
『歌を聴いた感想を短くずばりと書きなさい。但し、歌っている人についての感想ではありません。歌そのものの感想ですよ。』
 教師は列指名をし、発表が終わった子供は着席させる。
 教師は出された意見を順次板書していく。
 次が発表された。

 ○明るい
 ○チューリップがさいて楽しそう
 ○発音がよく、まとまっている
 ○チューリップがさいてうれしい
 ○チューリップがたくさんならんでいる
 ○やさしい歌だ
 ○おもしろい曲だ
 ○きれいな歌だ


 発表終了後、次の指示をする。

『この歌を分析しなさい。時間は10分くらいです。』


 子供達は各自ノートに自分の観点で分析を始める。
 指示後、教師は黒板に「チューリップ」の歌詞を書き始める。歌詞を書き終えると、机間巡視を行いどんな観点から分析しているかを確認していく。途中、話者の位置から分析していたり、題から分析していたりなどクラスの中で一人しかない観点の子供やその根拠が優れている子供には赤でまるをつける。また、なかなか進んでいない子供にはヒントを与えていく。
 約13分後、教師は指示する。
『鉛筆を置きなさい。分析した人は立ちなさい。どんな観点から分析したか、発表しなさい。』
 列ごとに指名する。子供たちは順次発表していく。自分で書いた観点が発表されてしまったら、着席していく。
 子供は、「私はクライマックスで分析しました」というように発表していく。
 次の順に観点が発表される。

 ・クライマックス
 ・設定
 ・話者
 ・3つにわけるならどこで分けるか
 ・主題
 ・リフレイン
 ・倒置法


 この7つが発表されると全員が着席した。題を観点としていると前もってチェックしていた子供3名も着席したので、その3名に発表させる。その子供たちが応える。
「題で分析しました。」
 よって、次に示す観点8つが最終的に板書されたことになる。

 ・クライマックス
 ・設定
 ・話者
 ・3つにわけるならどこで分けるか
 ・主題
 ・リフレイン
 ・倒置法
 ・題


 ここで言う。

『どの観点から、全員で検討していきましょうか。』


 子供達から「設定」の声があがる。そこで、言う。

『では、設定から始めましょう。自信がない人から発表しなさい。』


 次の意見が出る。
 教師は板書する。
設定に関して
 春、花壇にチューリップが咲いた。
 それを見た話者がきれいと思った。
 赤白黄色と並んでいるのを見てきれいと思った。
リフレインに関して
 <さいたさいた><ならんだならんだ>が繰り返されている。この部分を強く言いたいと考えられる。
話者に関して
 話者は、チューリップを見ている人だ。
象徴に関して チューリップは赤ちゃんじゃないか。
主題に関して やっと咲いたチューリップ
   <どのはなみても きれいだな>
3つに分けるに関して
 <さいた さいた チューリップのはなが  ならんだ ならんだ あか しろ きいろ  どのはなみても きれいだな>に分かれる。それは、前が様子、中が見たところ、後が感想だからだ。
クライマックスに関して
 クライマックスは<どのはなみても きれいだな>だ。それは、繰り返しがあるからだ。
倒置法に関して
 <さいた さいた チューリップのはなが>が倒置法だ。<チューリップのはなが>を強めるために使ってある。
 全員がこの観点すべてから分析してはいないので、話者の位置とチューリップとの距離から考えさせ、チューリップの象徴から主題へ迫ることにした。

そこで、問う。

『話者とチューリップの距離は遠いですか、近いですか。』


 私は、話者がだんだんと近づきながらチューリップの一つ一つに着目して、それぞれが<きれいだな>ということに気づくということに子供たちを持って行きたかったので、この発問をしたのだが、子供はただ遠いか近いの討論となった。
 そこで、題が象徴であることは子供全員が納得していたので、この討論は打ち切り、次の発問をする。

『この<チューリップ>が象徴しているものは何ですか。』


 各自考えた。
 次の意見が出た。
○赤ちゃん 10人
○人間 3人
○人 2人
○分からない 他全員
 ここまでで、43分間が経過した。よって、クラス全体で主題を検討する時間がないので、次の資料(コラムポケットパーク チューリップ 熊本日々新聞92年4月10日夕刊9面2段)を配布し読み上げた。

『今からこの「チューリップ」に関する新聞記事を読み上げます。

<「さいた さいた チューリップのはなが」で始まる童謡「チューリップ」。この愛唱歌ができてから約六十年になるが、作詞の著作権をめぐっていま東京高裁で争われている。/一審で作詞者と認められたのは、東京都世田谷区に住む八十五歳の近藤宮子さん。勝訴の決め手となったのは「あか しろ きいろ どのはなみても きれいだな」のくだりに込められた近藤さんの重いだった。/「人間はじめ何事にもそれぞれの美しさ、良さがある。特に、弱いものには目を配りたい、という気持ちを詞にしたの」。満開のチューリップに誘われて近藤さんに電話をかけたら、作詞のいきさつを張りのある声で語ってくれた。(以下有動略)>


『今日の勉強の感想を書きなさい。』



 ここまでで、50分間の授業だった。
 この後かかれた子供の感想を示す。

○こんなたった六行の歌に、こんなに深い意味や気持ちが入っていたのか。
○ふだん何気なく歌っていたこの歌にも、こんな意味があるなんて思わなかった。人間のことが書いてあったなんて・・。
○いつも何となく口ずさんでしまうチューリップ。意味など一度も考えたことなどなかった。でも、今日の勉強ができてよ
 かった。
○「チューリップ」とは、ただチューリップがさいていることを書いた歌だと思っていた。今日の勉強で作詞した人がどに
 ょうな気持ちで書いたか、どのようなことが言いたかったかが分かった。勉強してよかった。
○チューリップは人であること、赤ちゃんであることがわかった。それと、チューリップという歌でいろいろなことがわか
 るんだなと思った。
○かんたんそうに思えたがむずかしかった。もっともっとこんな勉強がしたい。
○とっても?が多かった。意外とこれもむずかしかった。始めよりも意味がよくわかった。
○ほんのちょっとの詩から、あれだけのことが分かった。
○また一つ、歌の分析ができたからよかった。そして、ただの歌にもいろいろな気持ちの入ったうたがあるものだなあと思
 った。
○だれが聞いても知っている歌なのに、勉強してみるとむずかしかった。
○いつもなんとなく聞いている歌なのに、その意味など考えてもみなかった。この歌の意味、こめられた思いなどがわかっ
 た。

  



「チューリップ」の授業の考察

導入部について

 テープをなぜ幼児(5歳・3歳)の歌にしたか。それは、幼児でさえ知っている歌であるといことを子供達に自覚させるためである。慣れ親しんでいる歌、こんなの簡単、なんでこんな歌を6年国語で勉強するのという意外感を子供達にもたせるためであった。すなわち、「チューリップ」=簡単・単純・明解を意識づけることを意図した。このテープは興味関心を高めるには効果があり、なごやかな雰囲気づくりに役だった。


展開部

1 自力解決部について
 「この歌を分析しなさい。時間は10分くらいです。」が発問指示である。
 子供達は各自ノートに自分の観点で分析を始める。
 指示後、教師は黒板に「チューリップ」の歌詞を書き始める。歌詞を書き終えると、机間巡視を行いどんな観点から分析しているかを確認していく。途中、話者の位置から分析していたり、題から分析していたりなどクラスの中で一人しかない観点の子供やその根拠が優れている子供には赤でまるをつける。また、なかなか進んでいない子供にはヒントを与えた。
 次の順に観点が発表された。
 ・クライマックス
 ・設定
 ・話者
 ・3つにわけるならどこで分けるか
 ・主題
 ・リフレイン
 ・倒置法
 ・題
 これだけ分析の観点が出されただけで、授業者としては満足である。課題づくりは、それまでの授業の反映であることを証明したと思う。

2 共同解決部について

 クラス全体で分析した部分を共同解決と呼ぶことにする。
 全員の子どもは上記の観点すべてから分析したのではない。多くて4つ、少なくて2つの観点からである。よって、先の観点から分析したらどうなるかは全員の考えを寄せ合う必要がある。
 問題はその観点から分析すると、「チューリップ」はどう解釈されるかである。
 よって、討論形式の形態をとることにした。
 問題はその解決順序であるが、順序は設定からその他に移るようにした。それは、設定から検討することが基本であると考えるからである。
 ここで、本時の目標を示す。
「自分なりの検討を通し、「チューリップ」が「人間」やその他全てのものを象徴していることに気づき、主題を理解することができる。」
 主題に迫るストラテジーが問題であった。
 話者とチューリップとの距離を問うことを通して、主題に迫れるのではないかという仮説を持った。 
終末部について
 時間不足が本時の大きな失敗であった。それは授業者である私が時刻を間違えたからである。

 さて、本時の目標は達成できたか。
 結論は否である。
「自分なりの検討を通し、「チューリップ」が「人間」やその他全てのものを象徴していることに気づき」はしたが、「主題を理解することができる」までは至っていないからである。
 「理解する」を、子どもが様々な気づきを出し合い、討論しある方向に落ちつくという意図で私は目標の中に用いたが、活動には現れていないからである。
 やはり、主題に至るまでの活動が不足していたと結論づけるしかない結果である。
テーマを検証できたか
 「自ら学ぶ児童の育成」には、その方法を身に付けさせなければならない。よく、釣竿と餌を与え魚を釣らせるよりナイフを与え釣竿の作り方と餌の取り方を教えよ、と言われる。
 私としては、その達成のためにこれまで実践してきたつもりである。
 



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